マンション建て替え円滑化法が6月12日の参院本会議で全会一致で可決、成立しました。同法は、マンションの建て替えを円滑に進めるため、建て替えに合意した所有者などによるマンション建替組合の設立、再築マンションへの関係権利の移行の手続きなどを定めています。法案を審議した4日の参院国土交通委員会で、富樫練三議員は、マンション建て替えに伴う転出者の受け皿が不十分だと指摘しました。
 公共住宅への優先入居といっても、東京圏では12倍の入居倍率であり実質がともなわない、として公営住宅の大幅増を求めました。扇千景国土交通相は「公営住宅を整備する計画が必要だ」と答弁しました。
 大沢辰美議員は11日の同委員会で、1995年の阪神・淡路大震災後の被災マンション建て替えの実態をふまえ、今後予想される地震災害に備えたマンションの耐震診断と耐震改修工事を促進するうえでの国の役割をただしました。
 国土交通省の三沢真住宅局長は、震災後設けられたマンションなど共同住宅に対する国の補助制度を適用した耐震工事の実施は全国で1棟だけにとどまっており、今後、公的支援制度を活用し耐震改修工事の推進に努力すると表明しました。
国、自治体が援助を
 法案成立前の、6日の参院国土交通委員会で、マンション建て替え円滑化法案の参考人質疑が行われ、富樫練三議員が質問しました。
 ハウジングケースワーカーの千代崎一夫氏は、マンションを長く使うために積極的な努力をすることが、最終的に建て替えを円滑に進めるためにも大切だと強調しました。
 富樫議員は「高齢者や低所得者が建て替えの際に、慣れ親しんだマンションに住みつづけられるようにするため」の施策を質問しました。
 兵庫県住宅供給公社審議役の門田至弘氏は「お年寄りのための賃貸住宅を合築すること」もと発言しました。
参考人質疑において千代崎一夫氏が、「長く使う努力が、建て替えを円滑に進めるために大切」と述べたことが注目を集めました。その参考人冒頭意見の議事録の要旨を紹介いたします。



 私は、ハウジングケースワーカーと名のっていまして、住宅コンサルタント事務所を開いております。昨年、マンション管理士の試験を受け、今年、合格、登録をしたマンション管理士でございます。私は、マンションで実際に起こっていることをお話しして法案の論議に参考になればと思い、お話をさせていただきます。
 私自身、主な業務というのは、建物を診断して長期営繕計画を作り、必要なら工事企画を行い、工事中は監理という業務を行っております。その他、管理組合の立ち上げとか、規約の整備、ペット問題、管理会社への不満等、様々な相談に乗っております。直接マンション住民と接している実務を仕事にしております。
 そのような立場で今回のマンションの建替えの円滑化に関する法律案を見ますと、幾つか心配点があります。中でも一番感じているのは、建て替えの前に長く使えるかということの検討がどれだけ積極的に行われたかという、行われるかという問題です。長く使うということに対して助成や税制などの工夫をして、むしろ長く使うということはいいことだという風潮を育てていただきたいと思うわけです。当然、いつかは建て替えをしなければならないというのはもちろんです。そのときに、マンションを長く使うということをよく検討し実行した上ならば、反対者も少なくなります。
 長生きマンションと私は呼んでおりますけれども、それの積極的検討をということで、川崎のある団地で、築二十年を過ぎて二度目の大規模修繕を企画していたときです。次の十年目、つまり三十年のときのことを考えて今回の工事企画をしましょうという私の提案に対して、役員は、千代崎さん、次はもう建て替えだよと、こういうふうに言っておりました。だから、役員会の感じとしてはそういうふうになっています。ただ、私の方は、木造の建物だって三十年、四十年もっていますよ、コンクリートの建物で三十年次には建て替えという話はないですよと、こういうふうにお話をしたわけです。その場が終わった後に役員でない人が寄ってきて、千代崎さん、いいことを言っていただいたと、三十年で建て替えの話ということが出るならば、二十年のときの大規模修繕にお金を払う気はない、それを聞いて安心してお金が払えると。
 ここの団地は積立金も計画を詰めて集めておりましたので、改めてお金を集めるということではありませんけれども、やはり年限を決めたらその十年前には修繕にはお金を掛けなくなってしまう、こういう雰囲気になってしまうということです。
 別な件では、かなり傷んだマンションに調査に行くこともあります。そうすると、うちのマンションはどのぐらいもちますかねというのをよく質問として受けます。そのときに、現在のコンクリートの老朽化も含めた度合いを調べて、これに合った修理をすると。その後、そこについて十年ぐらい傷み具合の経過を見ましょうと。十年間でどのぐらい傷みが進むのかという確認をしましょうと。かなり傷んでいますと、二十年でこんな状態になっているというときに、百年はもたせましょうよと私が言えば、それは信用されないと思います。ただ、二十年から三十年、三十年から四十年、こういった間にどのぐらいどこが傷むのかというのをちゃんと管理組合で握って、その上で五十年を迎える、あともうワンサイクル、つまり百年というのがもつかどうかと、こういう判断をしましょうとお話をしております。
 現実には、私どもも三十年近くなったマンションを幾つも見させていただいていますけれども、建て替えようという話はなかなか出ておりません。
 それから、社会資産としてマンションを見れば、近隣での地域的な移動とか、それから年齢層のミックス、こういうことも含めて、当然エレベーターを付けられる可能性のあるところは付けていただくとしても、エレベーターのないマンションも有効に生きてくるのではないかなというふうに思います。
 人間の高齢化にも対応したマンションが望まれていますが、段差を解消したり、手すりを付けたりしているマンションも増えてきました。共用部全体をバリアフリーにするために、住民のところでの意識と、それにプラスする助成制度というのもあればマンションのバリアフリー化はかなり進むのではないかなというふうに思います。東京の私の住みます板橋区では、助成制度があって、区民としても大変うれしく思っております。
 バリアフリー化を喜ぶのは高齢者だけではありません。障害をお持ちの方はもちろんですが、けがをした場合など、健常者でも大変喜ばれます。
 次に、設備の陳腐化という言葉が出てきております。だから修繕では駄目なんだと言われております。ただ、そのことも全体を見直すとかなり対応できます。私自身の業務の中でも、専有部分も全部必要なところの床をはがしてステンレス管に取り替えたと、こういう仕事もやっております。これを考えれば、設備の陳腐化ということも実際には直していける、こういうふうに思っております。
 建て替えの大きな理由に狭小住宅であるということも挙げられております。これに対しては、狭い住居を縦につなげたり横につなげたり、これを二戸一という言い方をしておりますけれども、こういう形で直接住宅の広さを加減するということと同時に、共用部分で大浴場を持っている団地もありますし、それから宿泊できる集会室、こんな手当てをしているところもあります。そういうことで狭小への対応というのも可能ではないかというふうに思います。
 そのほか、IT対策とか、それから省エネルギーとか屋上緑化とか太陽光発電と様々なことをすべて可能性として考えて既存マンションでも行おうと思っております。これらのことをやれば建て替えの理由というのはかなりなくなっていきまして、建て替えそのものをかなり先に延ばせますと。今あるマンションを長く使うということを十分に検討していただきたい。そのためには、助成もし、税金その他のそれを優遇する措置も是非作っていただきたいと。その上でマンション建替えの円滑化等に関する法律案という、このものが生きていくのではないかなと、こういうふうに思っております。