2004年度決算に対する討論

松崎いたる

板橋区民のくらしは、いまなお景気低迷の谷を脱しきれておらず、苦しい現実に置かれています。

 それは、生活保護世帯が増え続けていること、国民健康保険料の未収・滞納が増加していることなどにも端的にあらわれています。

 2004年度は、くらし応援の施策の展開こそが求められていました。しかし、区は区民の声に背をむけ、福祉切り捨てとくらし破壊の計画ともいうべき「経営刷新計画」をスタートさせました。

 刷新計画は、自治体が本来担うべき公的な責任を投げ捨てて、「官から民へ」などという財界や自民党政権主導の上から掛け声のもと、住民の福祉や地方自治を利潤最優先の「市場の原理」に投げ入れようとするものです。

 この刷新計画が、不景気や国の悪政によって疲弊した区民生活に、多大な負担増を押し付け、追い討ちをかけるものとなっていることは「刷新元年」として位置付けられた決算をみても、明白です。

 いくつかの例をあげるならば、まず福祉分野です。

 障害者の大事な足となってきた「福祉タクシー券事業」を一人当たりの交付枚数を削減し、交付方法も「申請」方式にするなどの改悪を強行した結果、公布枚数が前年比で40万枚も減少しています。これは、障害者の自立と社会参加を推進すべきである区行政が、逆にブレーキをかける立場になったことを示すものです。

 高齢化社会へのますます充実した対応が求められているにもかかわらず、「敬老金支給制度」や「高齢者ひとりぐらし給食サービス事業」が廃止されました。寝たきりの高齢者にたいする「紙おむつ」は支給対象が狭められ、「福祉電話事業」は自己電話への助成が打ち切られました。「高齢者住宅設備改修助成事業」も助成限度額が半分以下に削減されました。そのうえ、これまで無料で実施してきた「敬老入浴事業」をはじめとする10の事業が新たに有料化されました。こうした高齢者とその家族の負担を著しく増加させる区の姿勢に「行政は敬老の心をわすれたのか」という区民の非難の声が上がるのは当然です。

 

 子育て・教育の分野でも「区立小・中学校給食用物資無償供給事業」の廃止、「私立幼稚園保護者負担軽減事業」の減額など、刷新計画による切り捨て額は3億6000万円にものばります。このほか、幼稚園・保育園の保育料をはじめとする各種使用料・手数料の値上げも強行されました。また、区立保育園の民営化の推進や拙速な学校統廃合は、子育て教育に対する公的責任の放棄を示すものであり、決算調査特別委員会の総括質問でわが党が指摘した学校給食調理室の改築計画が中止に追い込まれ、不衛生な実態を残したままになっていることは、この矛盾を象徴するものとなっています。

 

 産業振興の分野でも、産業経済費の連続的な大幅減額傾向に歯止めがかけられておらず、2004年度は、前年よりもさらに3億円も減額されています。景気回復と地域産業の高揚への区民の期待は今年度からの経済産業部の立ち上げと産業振興条例の制定という形にあらわれていますが、施策の充実を裏付ける十分な予算の裏づけが必要となっています。

 

 まちづくりの分野でも、環境への意識が高まるなか区民の要求が根強いにもかかわらず、公園造成などの緑化対策費が6億3千万円も減額されました。

 

 こうした区民負担の増大と区民施策の後退がもたらされた一方で、国民の税金を無駄遣いする大型開発は刷新されないまま温存されています。

 上板橋南口再開発は、地元住民や多くの地権者の反対にもかかわらず都市計画決定がなされましたが、この「決定」は旧公団の広大な土地をめぐっての「土地ころがし」ともいえる不明瞭な土地所有者の動きについて、区が実態を把握すらできないという異常な事態で強行されたものです。

 いま明らかになっているのは、開発による土地所有の割合ひとつをとってみても、地権者の土地所有が84%から12%に大幅に減少するのに対して、大手不動産企業の住友不動産がいっきょに33%もの土地を手にいれるなど、資産の多くが大企業に独占されるということです。

 住民を追い出し、大企業の利潤追求のために血税を投じる上板再開発は、いまからでも中止すべきです。

 

 二つの特別会計についても問題があります。

 国民健康保険事業特別会計については、保険料の未収や滞納が増加していることをうけて区ははじめて高額滞納者の財産調査をおこない、対象の207世帯のうち、調査後完納できたのは5件、分納となったのは6件、差し押さえをおこなったのは3件と報告しています。残り193世帯は預貯金もなく、毎年の連続値上げの影響もうけ、払いたくとも払えない実態にあることが明らかになりました。未収・滞納の問題は区民の経済モラルの低下などの問題に解消できるものではなく、深刻なくらしの問題だということを示しています。

 短期証、資格証の発行というペナルティを科すのではなく、これまで削減され続けている国庫負担を元に戻すこと、値上げをやめ払うことのできる保険料に改めることが、皆保険制度を維持していく上でももとめられています。

 

 老人保健医療特別会計については、対象者が年々減る一方で一般会計からの繰り入れ額が逆に増え続けるという矛盾した傾向がはっきりとあらわれています。これは国が老人保健法を改悪した影響によるものです。

 国はさらに、「各医療保険会計からの老健会計への拠出金が各保険会計を圧迫させている」などと称して、老健対象者の年齢をさらに引き上げようとし、高齢者の別立て保険まで設置しようとしています。

 また、東京都の老人医療費助成制度も年々対象年齢が引き上げられたあげくに、まもなく助成そのものが廃止されようとしています。

 こうした国・東京都の施策の後退が高齢者本人の医療費負担を増大させており、老後の生活に暗い影をおとしています。

 病気の早期発見・早期治療に力点をおくことこそ、あるべき医療制度の姿であり、病気の重症化を抑えることこそが医療費の抑制にもつながります。高齢者が安心してお医者さんにかかれるようにするために求められるのは、国の大きな責任のもとで、高齢者の医療費負担を軽減することであり、都や板橋区が自治体として負担軽減事業を実施することです。あらためて、高齢者入院見舞金制度など、区独自の取り組みを求めるものです。

 

 以上、決算にしめされた区政の問題について指摘いたしましたが、今日の国の政治状況も暗い雲として板橋区民を取り巻いています。

 小泉自民党・公明党政権は、先の総選挙において、「郵政民営化一本」という偽りの争点を有権者に押し付け、比較第1党が議席を独占するという小選挙区制の悪弊を利用し、衆院議席の3分の2を占めるにいたりました。しかし、そこに民意が示されているとは決していえません。

 選挙中は「任期中、消費税増税はしない」「サラリーマン増税はしない」など明言していたにもかかわらず、選挙直後のいまの時期に、消費税の二ケタ増税、定率減税の廃止という文字通りのサラリーマン増税が、具体的に示されたことに、国民の怒りの世論が広がっています。

 また昨日、強行された「障害者自立支援法」についても「福祉への応益負担の導入は、障害者の生きる権利を奪うもの」という命がけの抗議が止むことがありません。

 民意を偽った議席を背景に、小泉自民党は憲法の全面改悪までも一挙に進めようとしています。

 自民党の改憲草案が、戦力の不保持、交戦権の放棄を明記した9条2項を削除し、海外派兵まで任務とする「自衛軍」の創設を掲げたことは、日本をふたたび「海外で戦争ができる国」に作りかえてしまうものです。また基本的的人権を「公益のもとに」と限定することは、ときの権力の都合で人権すらも奪われるということにほかなりません。 

 まさに小泉自民党政治の暴走は、平和と民主主義を根底から覆すまで、突き進もうとしています。

 石塚区長は第9条をはじめとしていまのの憲法は、「世界の平和を希求する日本の大きな理想を力強く宣言したものであり、日本国憲法を尊重して行動する」と、この議場でも述べていますが、憲法に裏打ちされた地方自治こそは、平和と民主主義、人権にとっての最後の砦とでもいうべきものです。区民の立場に立った自主的・民主的区政運営を図れることをつよくもとめ、討論を終わります。


日本共産党板橋区議団