貧困と格差から目をそらし、基金積み立て先にありきの予算執行を批判

松崎いたる区議

 ただいまより、日本共産党板橋区議団を代表して、報告第1号「2006年(平成18年度)板橋区一般会計歳入歳出決算」並びに第2号「国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算」、第3号「老人保健医療特別会計歳入歳出決算」、第4号「介護保険事業特別会計歳入歳出決算」の「認定」に、反対の立場から討論を行います。

 当該年度の決算は、石塚前区政の最終年の決算であることから、与党会派から前区長の労苦を讃えるためにも「全会一致で認定を」との趣旨の意見がありましたが、決算は区長個人のためのものではありません。区民全体の暮らしや営業、福祉、教育、環境にとって、いかなる役割を果たしたのか、という視点こそ決算にのぞむうえで重要であると考えます。

 2006年度は区民にとってどんな年であったでしょうか?

 税制「改正」の名のもとに高齢者控除が廃止され、非課税から課税へと変わった人が生まれ、しかも課税となったことで国保料・介護保険料の負担が膨れあがり、2重3重の負担増が区民のくらしに重くのしかかりました。介護保険の改正は、高齢者の暮らしを圧迫し、介護の水準自体も低下させています。さらには来年度から高齢者の医療を一般の医療保険から切り離す「後期高齢者制度」を実施するとした医療関連法案が成立したことで、老後の医療と暮らしの不安が増大しています。

自立支援法による障害者への応益負担導入は、軽減策が取られたとはいえ、負担が増えたことは避けられず、福祉園への通園をあきらめた人、デイサービスをやめたり、減らしたりする人が続出するなど、障害者の生きがいや生きる権利を奪う事態になっています。さらにセーフティネットであるはずの生活保護も、老齢加算が完全に廃止となり、以前から比べると1万8090円、12%の減額となり、厳しさは広がる一方です。このうえ母子家庭への加算も廃止がきまり、現在経過措置として減額されています。こうした実態は、「貧困と格差」の広がりそのものです。にもかかわらず、区としておこなうべき金銭給付事業など積極的な生活支援はありませんでした。激変緩和としてとられた施策も国の制度の枠内であり、区民の切実な要求を満たすものではありません。そのかわり区が熱中したのが経営刷新計画です。

刷新計画が指標とした「経常収支比率」「人件費比率」「公債費比率」の3つ比率はすで前年の2005年度決算時点で、目標値を超過達成しています。しかし、計画の追加修正がおこなわれ、第二次刷新計画にへと押しすめています。目標を達成したあとも、「手綱を緩めてはならない」と区民施策の廃止・縮小と基金積み上げをつづけていくことは、この計画が区民の暮らしからかけ離れたものであることをしめしています。基金は、2005年度末166億7,700万円から、2006年度末323億3,200万円へと、1年間で156億5,500万円もの積み上げが行われました。「基金があったから財政難を乗り切れた」との主張がありますが、そもそも過去の財政難は区の失政によって生み出されたものです。

1990年(H2)にバブルが崩壊し、経済状況の悪化が目に見えているにもかかわらず、当初計画にもないまま94年(H6)の熱帯環境植物園、95(H7)年のエコポリスセンター、2006(H18)年にはリサイクルプラザなど、国の方針に追随して、区は様々なハコもの建設をおこなってきました。さらに97(H9)年の成増北口、2002(H14)年の浮間舟渡駅前などの再開発を次々におこない多額の税金を投入してきました。これらが区の言う「財政困難」の原因であり、その失政の穴埋めを「基金」に頼る姿勢は改めるべきものです。基金は暮らしを支えるためにこそ活用されるべきものであり、施設建設のためだけのものでありません。 枠配分予算制度があらたに採用されました。各部の裁量で新規事業に道を開くことを装いながら、スクラップアンドビルドが前提とされているため、結果的には必要な事業を削減し、また区民要望をはねつけるための手法になっています。こうしたもとでおこなわれた予算執行が区民に何をもたらしたか? 以後、分野別にみてみると、

まず平和の課題について、「国民保護計画」の名で戦時準備態勢づくりがはじめられたことは重大です。戦争の惨禍から区民の生命と財産を守るために何よりも大切なことは、戦争を起こさないための平和の努力であり、「戦争がおきたらどうするか」を準備することではありません。日本国憲法と板橋区平和宣言に則った反戦・平和の施策の展開こそ求められています。

格差是正のうえで重要な住宅施策でも区民要望にこたえる決算とはなりませんでした。都営・区営・高齢者住宅などの公営住宅に入居を希望する区民は合計で4,380世帯を超えていますが、実際に入居できたのはわずか47件にすぎません。こうした現実があっても、区はこの圧倒的な需要をみたすための努力をなんらとろうともしていません。東京都に都営住宅の増築を要望することすら、拒絶しているのです。しかも経営刷新計画の下、「住み替え貸付制度」「高齢者家賃助成制度」「住宅資金利子補給制度」を次々と廃止してきました。市場原理だけに頼った現在の住宅政策を転換し、公営住宅の増設、家賃助成制度の充実こそ、切実に求められています。

「仕事おこし」「商売繁盛」の願いにはどう応えたでしょうか?産業振興ビジョンが策定され産業経済部も新設されて、中小企業振興への期待が高まりました。しかし依然として予算のなかの産業経済費の構成比は0.9%と、他の予算科目と比べても最も低い状態です。業者の頼みの綱となるべき産業融資の実績が、前年度と比べて減少しているのは、ニーズが低下したのではなく、借りにくくなっている実態がひろがっているからです。信用保証料への補助をおこなっていないのは、23区中、板橋区を含む6区だけですが、板橋区でも中小業者や創業者を支援するために、融資制度を利用しやすくするために保証料の助成に踏み出すことが必要です。

環境への関心が高まる中、ごみをめぐる行政も注目されましたが、区がとりくんだことは、環境保護のためのごみ減量ではなく、経費削減のためのごみ焼却処理の拡大でした。環境や健康への影響が懸念される廃プラスティックの焼却方針を、こともあろうに「リサイクル」の名で推し進めようと「サーマルリサイクル」を準備し、ごみから利潤をあげるために大企業と一体となっての株式会社づくりに奔走しました。これは当事者自身が「ごみを減らすことと、売電事業はパラドックス」と認めるように、ごみ減量にむけての清掃事業に大きな矛盾をもちこむものとなりました。

区民の命と健康を守る施策、福祉の取り組みは十分なものだったでしょうか?障害者・高齢者福祉の分野では、いっそうの「民への開放」がおしすすめられました。直営として最後まで存続していた加賀福祉園に指定管理者制度が導入され、すべての福祉園に指定管理者制度のもとにおかれることになりました。しかし父母からは「非常勤職員が増え、やっぱり水準が低下している」との懸念の声が多く寄せられています。仲町・徳丸の各ふれあい館も指定管理者制度になりましたが、ここでも水準低下が心配されています。あるふれあい館では、16名いた職員のうち、9名の職員が辞めています。労働者への身分保障の低さや、きびしい労働条件などが、職員が1年もたたずに辞めてしまう要因となっているのです。利潤を生まない高齢者の福祉現場を、利潤がなければ運営を持続できない民間が指定管理者として担わされる矛盾が深刻にあらわれているのです。さらに公害認定患者の区立プール利用事業の廃止は看過できない後退です。廃止の理由は「利用者が減った」というものですが、国の認定患者は高齢化により減少するのは当然のことです。そうであるならば、公害に起因する症状に苦しみながらも、国がその責任を認めようとしない非認定患者にまで対象枠を広げることこそ、人間の血の通った地方自治です。障害者のリフト付タクシー事業の廃止も重大です。 区は、「民間のリフト付タクシー業者も増えた。宮園だけとの契約では不公平と監査に指摘されている」といいますが、不公平の是正は、利用できるタクシー業者の拡充でこそ実現すべきで、「やめてしまう」というのはあまりに乱暴な論理です。

区民の健康を守るうえでも大きな障害が持ち込まれた年ともなりました。 区民健康診査事業のうち、骨粗しょう症検診・眼科検診・成人歯科検診に自己負担が導入されました。受診率を高めることこそもっとも重要な課題であるのに、有料化によって、区民を健診から遠ざけるのは、施策として大きなあやまりです。

まちづくりと防災の分野でも重大な停滞が生じています。上板橋駅南口再開発はその行き詰まりを、しだいに明らかにしています。 2006年度には当初、今年度からの着工をめざし、組合設立を最大の目標として位置づけてきました。しかし、実際にはいまなお再開発に同意したのは土地所有権利者の6割にもみたず、今年度内も組合設立のメドもたっていません。再開発後に商売がつづけられるのか? 安心して暮らしていけるのか?という住民の基本的な心配ごとにすら、答えられない状況です。「やってみなければわからない」という先行き不安定な再開発計画はきっぱり中止し、住民が合意できるまちづくりの協議を「1」からやり直すべきです。

 公共建築物の耐震診断がこの年度の重点事業に位置づけられましたが、区役所本庁舎がその対象外であったことは、南館建替え計画を知った区民の素朴な疑問となっています。総額50億円もかかる南館建替えという大きな事業は、当然2006年度も計画にもとづく準備があってしかるべきです。慎重な計画もなく、あまりに早急なすすめ方に危惧を抱く人もすくなくありません。また今年度の後半になって突如として持ち上がった南館建替え事業によって、業務多忙の営繕課、建築指導課から人員を配置しなければならないなど、区政運営にもたらした影響も重大です。 木造建築物の耐震工事助成が始められたことは歓迎すべきですが、実際の助成件数は地域の防災力を高めるうえでは甚だ少ないものです。しかも、簡易工事への助成実績がまったくありません。なおこの年度に実施された区立保育園改修工事において、化学物質過敏症が2例、発生しています。さまざまな化学物質や粉塵が生ずる工事現場のすぐわきに、抵抗力のない子どもたちをさらすことになる現在の工事方法は見直すべきです。

子育て支援施策では、保育園の受け入れ枠の規制緩和などが行われましたが、区が責任をもって保育園の新設に取り組んでいないため、依然として待機児は全都でも高い水準のままです。また、学童クラブの民間委託では選定委員会での父母の評価を不当に評価し決定を覆したことは、父母の信頼を裏切るものです。また、現金給付事業を行わないという理由で新生児誕生祝事業を、継続を求める議会の二度までの陳情採択を無視して廃止しました。代わりにバウチャー方式による「すくすくカード」事業が行われましたが、利用実績は11%でしかありません。

教育分野では、教育基本法が180度改悪された年度でもあります。学校教育では不登校が以前高い水準にあり、いじめによる自殺予告が板橋の子どもから発信されました。学級のみならず、学校そのものが崩壊しているのではないか、こうした指摘もスタディー・サポーターから寄せられました。学校選択制によって人気校と学区内の子どもでさえ入学しない学校が生まれるなどその弊害はますます拡大する傾向にあります。 また、学校図書が国基準を満たさず、小中学校合わせて7万9千冊も不足しており、監査委員から早急対策を講じるよう求められました。こうした学校教育環境整備を後回しにしてきたことは重大です。 社会教育では、教育科学館をそれまでの現場職員の改善要求を無視し、指定管理者に管理運営を代行させましたが、社会教育施設を経費削減だけのために十分な検討もなしに強行したことは全国でも例がありません。

 つぎに3つの特別会計について、指摘いたします。

まず国民健康保険事業特別会計についてです。 保険料が、均等割り額で3.7%も引き上げられたうえ、2006年度は、税制改正の影響も受け、激変緩和措置が取られたとはいえ高齢者に大きな負担増をもたらしました。また、この年度の6月1日時点で、板橋区が交付した資格証明書の発行件数は都内で一番多い6322世帯となり、医療を受ける権利を奪う問題として、国会、マスコミなどでも取り上げられています。乳幼児からも、難病患者からも、均等割り世帯からも、一律に保険証を取り上げてきた区の姿勢は、刷新計画で掲げる「収納率アップ」の数値目標を至上命題としてきたからにほかなりません。この異常に多い資格証明書の発行は直ちにやめ、区民の命と健康をまもる権利を保障するという本来の事業目的にたちもどるべきです。

つぎ老人保健事業特別会計についてです。老健対象者が年々減り、全体の決算額も減っていますが、1件あたりの診療報酬額=レセプト額が逆に増えている事態は重く受けとめるべきです。さまざまな負担増により、「軽い症状のうちに医者に行く経済的余力がないため、病気が重症になってようやく医者に行く」、このことが1件あたりのレセプト額を増額させているのです。早期発見・早期治療という医療の原点が根底から切り崩されています。 政府は来年4月から75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度を始めようとしていますが、保険料負担を増大させ、受診できる医療にも制限を加えるこの制度の中止・撤回を区はつよく求めるべきです。

さいごに介護保険事業特別会計についてです。 まず問題なのは、平均40%も保険料を値上げしたことです。この値上げは国の税制改正ともあいまって、高齢者への2重、3重の負担増となりました。老後の安心をつくるはずの『介護』が、逆に老後の大きな不安要素となっているのです。第二に問題なのは、国の介護保険制度の見直しどおりに策定された第3期事業計画が、区民の需要と実態からかけ離れた計画になっていることです。そのため、軽度の介護を必要とする方の訪問介護利用が減らされ、車椅子や特殊ベッドも取り上げられました。自立の機会や外出の自由を奪う結果も広げています。地域密着型サービスの達成率は低く、今年度もさらに下回ることが予測されています。今年度末には、使わなかった保険料の積み立てである「介護給付費準備基金」の額が、14億6千万円にもなることが判明しています。保険料を引き上げておきながら、使い残し「基金」が増えていく事態は、保険料負担の増大で苦しむ区民の立場から許されることではありません。3ヵ年の事業計画半ばであっても、計画を修正し、少しでも保険料を引き下げるべきです。

 以上、2006年度の一般会計ほか、各特別会計の問題点を指摘いたしましたが、坂本区長におかれましては、来年度予算編成をおこなううえで、これらを反省点として、社会保障の縮小や負担増、物価高騰にくるしむ区民の暮らしをささえることを最優先されることをつよく要望し、決算認定にたいする反対討論といたします。


日本共産党板橋区議団