この予算案では区民の暮らしを守れない!

2010年度板橋区予算案に反対します。2010.3.26
討論者:小林おとみ

 ただいまより、日本共産党板橋区議団を代表して、議案第1号「2010年度東京都板橋区一般会計予算」、議案第2号「同国民健康保険事業特別会計予算」、議案第3号「同老人保健医療特別会計予算」、議案第4号「同介護保険事業特別会計予算」、議案第5号「同後期高齢者医療事業特別会計予算」に対する、委員会決定「可決」に反対し、議案第29号「同一般会計予算に対する修正動議」に賛成する立場から討論を行います。

 

 バブル崩壊から20年のあいだ、展開された「構造改革」「新自由主義」「市場原理主義」と呼ばれる経済政策や社会政策は、国民生活に膨大な格差と貧困を生みだしました。労働者派遣法に象徴される数々の規制緩和、社会保障費の大幅削減が続けられ、国民のくらしの問題は、「経済成長さえ果たせば解決する」「自助努力が足りないだけ」と自己責任論を押し付けられ続けてきました。国民は今こうした政策から日本の政治が抜け出ることを渇望しています。
 板橋区政が、1990年代から次々に行ってきた行財政改革と、そして今石塚区長から坂本区長へと引き継がれて進められている「経営刷新計画」は、こうした「構造改革」路線、「新自由主義」路線そのものです。「自助、共助、公助」のスローガンのもと区民の暮らしを直接温める事業を次々に廃止し、「最小の経費で最大の効果を」のスローガンは、職員の徹底的な削減と、本来自治体がやるべき事業を、低賃金、不安定雇用に支えられる民間市場にゆだねる政策として展開されてきました。経済効率最優先と目先の帳尻合わせに終始する財政運営の結果が、大不況のもとで苦しむ区民の暮らしをさらに疲弊させ、貧困と格差を広げる悪循環を作り出し、さらに相次ぐ職員の不祥事にみられるような行政の停滞や腐敗を作り出してきたのです。
 2010年度の予算編成に求められているのは、こうした区民生活を苦しめ続ける「構造改革」路線との決別であり、この路線によって作られたさまざまな痛みの傷口を修復し、深刻な消費不況から区民生活を守る大規模なセイフティーネットを作り上げることにこそあります。区長から提案された2010年度予算案がそうした区民の願いにこたえたものになっていないということについて、以下述べます。

 

まず第一に、区民の暮らしの実態に即した予算編成になっていないという問題です。賃金引き下げや失業の増大など、雇用環境が悪化する下で、個人消費が長期にわたって低迷しているという経済状況の中で、区民はいま、かつてない暮らしや仕事、雇用への不安をつのらせています。政府さえもが、貧困問題を取り上げ、なくしていくための意思表示として、国民の貧困率を発表し、生活保護の捕捉率もつかもうとしているときに、板橋区長には、貧困問題に真正面から取り組む姿勢が見られません。
親の失業や病気、ひとり親世帯の急増など、家庭の経済状態の悪化によって子どもたちの学ぶ環境や成長発達する環境が奪われているのではないかと心配が広がっているのに、区として子どもを取り巻く生活実態を調査することを拒否しています。区内の子育て世代の経済状態と子どもへの影響を調べ、そこから必要な施策を導き出すことは、区の責任であり、学校現場の個々の対応任せにすることはできないのです。
 

住宅政策も同様です。住まいの確保が人間として生きる諸権利の土台をなしていることがこの間の2年にわたる派遣村の経験で明らかにされています。低所得者の居住実態を調査し住宅政策を確立することが求められていますが、区の姿勢は、国や都の制度に期待するだけで、全く消極的です。区営住宅の応募倍率が112.5倍、区立高齢者住宅けやき苑は単身者向けが41.4倍、2人世帯向けが28倍など、ここ数年高倍率が続く中で、区立・区営の住宅の建設、増設に踏み出さない区の姿勢は容認できません。「住まいは人権」の立場での政策転換が求められます。
 

医療費の総抑制政策が、高齢者の尊厳を傷つけています。廃止が予定されている後期高齢者医療の保険料がなぜ引きあがらなければならないのか。納得できるものではないし、区として独自に高齢者医療に対する支援策が示されなければなりません。収入は増えないのに国民健康保険料は引きあがり続けています。わが党の質問に対して、若干の改善方向が打ち出されましたが、実情を確認しないままの資格証発行はやめるべきです。いのちに格差をもたらしてはなりません。区独自の保険料引き下げ、医療費に対するさまざまな助成などを打ち出して、区民の医療を受ける権利を守るべきです。

介護保険料についても区独自の保険料軽減事業の要件緩和を行うべきです。利用料に対する区独自の軽減事業や必要な介護を保障するための独自施策を実施することで、高齢者が人間らしく生きられるように区として支援すべきです。

 「雇用創出・地域経済活性化総合対策」として、22年度分6億3千9百万円をあてるとして、産業融資借換制度、区内共通プレミアム商品券発行、母子ひとり親自立支援などを発表しています。しかしこれでは不十分です。今こそ、区民生活にかかわる大幅な負担軽減、小規模な生活関連の公共事業の大量発注、経済波及効果の大きい住宅リフォーム資金助成制度の復活など、中期的な展望をもった施策を大胆にすすめることこそが必要です。また、ものづくりの継承を途絶えさせないためにも、工場への家賃助成や固定経費への助成制度を検討すべきです。

 

 第二には、職員定数の削減による区政の停滞についてです。

 新年度に向けて、各所管課から204人の増員要求がだされましたが、差し引き57名の減員です。必要な仕事に必要な人員を配置しないことによって区政の停滞が顕著になっています。

教育委員会でおきた架空工事発注事件の再発防止のために行われた、事務改善策によって、学校関係の修繕工事が激減する事態が引き起こされています。2007年度1238件あった学校の修繕工事が2009年度は2月半ばまでで515件にと激減しています。学校裁量が制限されたことによって、時間と手間がかかるようになり、事実上必要な工事が放置される事態が生まれてしまっているのです。教育委員会に必要な人員を配置し、必要な専門職を育てなければ、学校現場の要求にこたえることはできないし、早め早めに工事することで長持ちさせられる施設の老朽化が一層進むことになります。削減された人員と予算で、やりくりだけを迫るやりかたはすでに限界です。

 福祉分野では、国保の徴収員の保険料着服や、ケースワーカーによる保護費の着服、志村福祉事務所での盗難事件、ストーカー事件など、事件が相次いでいます。急増し複雑化する区民生活の不安や困難が広がる中で、区役所がもっとも力強いセイフティーネットとしての機能を発揮しなければならない時に、その現場の機能を低下させてはならないのです。福祉事務所では今年ケースワーカーが15人増員されましたが、1ケースワーカーあたりの件数は4月時点で87件、法に定められた1人80人には届きません。また生活に不安を抱えた相談が増え続けているのに相談業務への増員ははかられていません。派遣村の経験からは、生活支援や就労支援の専門家の配置も急がれます。

 そうしたことに対して、区は職員と組織の品質の改革が必要で、そのための「新たな行政改革計画を策定する」としています。しかし、今起きている問題は、そうした職員の意識改革や職場風土の改革、ましてやあいさつ運動などで解決できる問題ではありません。国の方針に忠実に従って職員削減を推し進める姿勢の根本的転換なくして、真に区民に頼りになる区役所づくりはできないと考えます。

 板橋区が90年代に行った行革方針によって、区の職員は総計で1187人削減されました。さらに、2004年から始まった第一次の経営刷新計画で440人、第二次刷新計画では、2010年度末までに342人の削減が行われることになっています。区政のあらゆる分野で「官から民へ」「民間開放万能論」がいまだに吹き荒れ続けています。学校警備員、学童擁護、学校給食調理などの民間委託が90年代に、そして刷新計画によって、体育施設や図書館、高齢者、障害者、保育など福祉分野にまで指定管理者制度が導入されました。学校用務、保育園の調理、用務、学童クラブの民間委託、保育園の民営化が行われ、福祉事務所のケースワーカーの仕事の一部の外部委託まで検討の俎上にのり出しています。2000人に及ぶ職員削減と置き換えられた労働は、いずれの職場でも、規制緩和された労働市場が受け皿となって、非正規雇用、低賃金の不安定雇用を広げ、格差と貧困を広げる土壌を作り出してきたのです。区民は、税金を使って格差と貧困を広げることを望んでいないと考えます。

 新年度、保育園の待機児対策課が新設されました。区は、「区立保育園を民営化することが待機児対策」といいますが、この答弁には詭弁があります。区が区立保育園を増設する方針を持たず、区立保育園を改築する時には民営化するという方針を大前提としているから、保育園を改築する時に保育施設を広げることによって定員を増やせるということにすぎないのです。待機児対策は私立認可園の誘致頼みで、公立は民営化でしかその役割を果たさないという姿勢です。保育園への入所を待ち望んでいる区民の理解が得られるものではとうていありません。

 

第三に、住民を無視して再開発やハコモノにこだわり続ける姿勢が作りだした無駄づかいについてです。

区長は選挙公約にも掲げなかった区役所庁舎南館改築を強引に進めてきました。1年目には年度途中で、担当課を作り、人を置き、耐震診断は必要なしとして、2年目には基本構想、3年目には基本設計も実施設計も作ってしまい、4年目には解体工事に着手するという超スピードでした。北館改修と合わせて総工費75億円にものぼる大プロジェクト計画は、基本構想の段階でも十分区民の声を聞き、基本計画づくりにももっと時間をかけるべきでした。計画を中止しても、移転先のMSビルとの賃貸契約が解約できず、借り続けるために月1260万円、1日41万円もの家賃を払い続けなければならないことが明らかになりました。その家賃の2ヶ月分で、議会が陳情採択したが見送られてしまった産後一ヶ月健診が実現できるそういう金額です。住宅リフォーム助成もこの家賃の2ヶ月分で実現できるのです。区民不在で、超スピードで計画を推し進めたツケはあまりにも大きなものになったといわざるを得ません。

上板橋駅南口の再開発は、21年間で5億円もの巨費をつぎ込み、都市計画決定後5年間の取り組みで、関係権利者の同意が法定数にも満たない事態は、この事業の正当性を失っているということです。2004年の都市計画決定の直前に、旧公団が当該再開発事業から商業権利者の反対が強いことを理由に撤退し、民間売却しました。区はこの旧公団用地を取得した相手方とは何の連絡も取れない中で、「8割の権利者が同意」と虚構の数字で都市計画決定を強行しました。あらためて区の責任が厳しく問われなければなりません。さらに今後5年間もの間、再開発に固執し続けるなど論外です。続ければ続けるほど、再開発地域だけが、防火対策から取り残されるだけではありませんか。さらなる無駄遣いと、住民への不安を押しつけ続けることはやめるべきです。

一方で、学校など既存の施設の改修は、改築か改修か、長持ちさせるのかの基準もないまま、その場しのぎの無計画さです。既存施設を総点検し、それぞれの施設ついてきちんと計画をもつべきです。

 

第四に、住民を真の主権者として地方自治を発展させる立場に立たなければならないということについてです。

区民の痛みの解決に正面から向き合うことをしないで、自治体が自らの機能を縮小させながら、「自助、共助、公助」の受け皿として、「区民との協働」や「新しい公共」を機能させようという考えは、住民が主人公となる地方自治の発展とは無縁のものです。

 自治体とは、「住民が暮らしていくための政治組織」であるとは、故蜷川元京都府知事の言葉です。「経済的な激変や自然的な災害から住民のいのちを守り生活基盤を持続可能なものにしていくために、住民を真の主権者として財源や権限、職員の能力を発揮していく組織」だと言っています。主権者である区民生活の向上のために、区の組織と職員がその機能と役割を高め、発揮することを中心に据えて、住民こそが主人公という区政運営がまず行われなければならないと考えます。自治基本条例の検討は、本来ならば、すべての職場で区民と職員が、共にどういう区政をつくるかの大議論が必要になるべき問題です。区民意見をくみあげる方法は、大いに検討の余地があると考えます。
 

以上述べてきたように、なぜ区民の暮らしの実態に即し、区民生活を守ることに真正面から取り組むことができないのかは、緊急財政対策に如実に表れました。11月に急に税収不足が判明したかのようにいいますが、それ自体が大変無責任な言い訳です。そもそも、予算フレームの段階から、「歳入の激減を見通して、実態に合った予算編成作業を行うべきだ」としたわが党の主張に耳を傾けず、区は、東京都の発表待ちという、主体性のない姿勢に終始しました。単年度収支の帳尻合わせだけの突貫工事の作業は、事業に与える影響や事業の存廃にまでつながることなど全く配慮なしに行われました。区は削減する事業のレベル分類をしましたが、そのレベルの決め方に区民の暮らしは基準とされず、区民の暮らしを温める事業は優先されていません。対象事業は、実施計画事業、サマカン事業、一律1000万円以上の既定事業とされ、議会決定は無視され、事業に対する評価など全く考慮されていません。結局、財政課中心のトップダウンです。そうした作業の結果に対する区長の政治判断がまったく示されていません。区民の暮らしがかつてなく厳しくなっているときに、結局は、福祉や教育、環境など区民の暮らしに直結する事業をばっさりと削るというようなやり方は、区民の暮らしへの背信行為ともいえるものです。さまざまな選択肢があったはずです。しかし結局、これまで続けられてきた経営刷新計画のやり方にしか向かえないところに区政のゆきづまりがあるといわざるを得ないのです。経営刷新計画では、区政も区民生活も豊かにさせることはできません。きっぱりとやめるべきです。そして、新たな行革方針として、こうしたやり方を繰り返すことのないよう、なによりも区民生活をしっかりと温める大きな政策転換をはかることを強く求めるものです。

 

わたくしたちが提出した「予算修正動議」は、いずれも、立場の違いや若干の中身の違いはあったとしても大方の皆さんにご賛同いただけるものと確信しています。最後に今年度末をもって退職される158名の職員のみなさんのご苦労に感謝を申し上げまして、私の反対討論といたします。 

 


日本共産党板橋区議団