|
ただいまより日本共産党板橋区議会議員団を代表して、報告第1号、2008年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算、報告第2号同国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算、報告第3号同老人保健医療特別会計歳入歳出決算、報告第4号同介護保険事業特別会計歳入歳出決算、報告第5号同後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算に対する委員会決定「可決」に反対し、討論を行います。
昨年の年末、「年越し派遣村」に象徴されたように、「貧困と格差」の広がりが大きな社会問題となりました。今年も同じ状況が繰り返されるのではないか…。そうさせない政治の取り組みが国政のみならず、地方自治体にも求められています。10月20日、厚生労働省がはじめて全国民の中での低所得者の割合や経済格差を示す「相対的貧困率」を公表しました。それによると日本は2006年15.7%、1997年以降、最も高い貧困率となり、先進国では最悪水準となりました。このように貧困が広がっている実態とは裏腹に、区が示す「平成20年度決算数値 バランスシートと行政コスト計算書」には、差引一般財源等増減額、いわゆる民間企業でいうところの当期純利益額は約208億円となり、前年よりも約26億円増加、区の財政健全化判断比率は、いずれも早期健全化基準を下回り、適正なものであるとしています。
しかし、区が用いた指標には、本来指標であるべき区民の暮らしが反映されていません。区のいう健全化は、この間刷新計画のもと進められてきた、さまざまな区民の負担増、施策の縮小や廃止など、区民への影響の上に成り立っています。そのうえに、国をあげて進められてきた構造改革路線、さらに世界的不況によりいっそう暮らしは厳しいものとなりました。
こうした貧困が広がる実態に対し、自治体として一番やるべき仕事は、区民の暮らしを温め、貧困の実態をなくす努力です。区民の暮らしが健全になってこそ、本来あるべき自治体の健全な財政が確立します。区民には貧困が広がっていて、自治体財政のみ健全といわれても、それは貧困の実態の上に成り立っている偽の健全財政でしかありません。区民の暮らしを温める施策は、一時的には財政支出は膨れますが、長い目で見ればそれは区民の暮らしを支え、結果、区政を支え発展させることにつながります。
2008年度の区の決算は、これ以上貧困を広げず、区民の暮らしを温める施策を最優先に実施したのか、何でもかんでも民間への開放ありきで安上がりの雇用を強要しなかったか、公共の仕事に携わる人の安定した雇用を保障し、事業の質の向上が行われたのかが問われました。
この観点に立ち、決算に対する検証を行いました。
以下3つの柱に沿って述べたいと思います。
まず第1の柱は、区の決算にあらわれた区民の貧困の広がりに対して、どのような施策が求められていたのかについてです。
平成20年度末には13,398人となった生活保護を受給した人、さらに路上生活者の相談は今もなお増え続けています。ここに構造改革路線により進められた派遣切り、期間工など、身勝手な企業が行った不安定雇用による、深刻な実態があらわれています。その相談に当たるのが福祉事務所ですが、毎年職員を増やしてきても追いついていません。手が足りない中で、連絡があったにもかかわらずアパートでの孤独死を生じさせてしまう、あるいは亡くなった区民の財産横領の事態を生じさせてしまいました。必要な相談、ケア、自立支援への十分な体制がとれる緊急対応はまったなしです。
不安定雇用が広がる中で、その不安定な労働実態を受け、子どもの貧困も深刻化しています。就学援助を受けている子どもの数は、小中学校で34.37%と高い比率で推移しています。そして保育の需要の急増にも若い世帯の経済的な厳しさがあらわれています。保育にかかる負担の軽減、さらに義務教育における私費負担をなくす対策は急務です。
また若い世帯の経済的な背景のもと増え続ける保育園の待機児対策も待ったなしです。民営化を進めるどころでなく、区立保育園を増設置する責任こそ問われています。
栄町保育園の耐震問題は以前から指摘もされ、改築計画が示されていたにもかかわらず先延ばしにしてきた責任を放棄し、いきなり耐震上危険なので閉鎖、廃止が示され、父母を中心として怒りが広がったことは言うまでもありません。仮園舎の設置、その後保育園を建て替えることは当然ですが、建て替え後は民営化という区の身勝手さは許されるものではありません。
大田区と並んで中小零細業者の町ともいわれるこの板橋です。融資を借りたくても借りられない、仕事が来ないのに融資の返済をしなければいけない、追い詰められたその実態に対し、自治体がすべきことはたくさんありました。補正で緊急対策は実施しましたが、それだけでは不十分です。貸店舗や借り工場などの家賃助成事業、税の減免拡充や「生活支援事業」の実施、直貸し制度の創設などが必要です。
国民健康保険事業では23区で一番資格証明書発行件数が多く、20年度末で全世帯の5%を占めました。その背景にある高い保険料を引き下げることこそ求められています。なぜ払うことができないのかという実情については、その資格証世帯の2.62%しか確認できていませんが、「会おうとしないのは悪質」と決めつけている区の姿勢は開き直りの姿勢にみえます。保険料を納めたら保険証を交付するのでと、命を守る保険証を徴収率アップの手法とすることは憲法に反します。直ちに通常の保険証を交付することを強く求めておきます。
差別医療制度である後期高齢者医療制度でも保険料が払えないその実態が広がっていました。08年度一度も払えなかった75歳以上の高齢者は966人でした。命を守り、暮らしを支えるためにも、この差別医療制度を直ちに廃止し、安心して医療を受けることができるよう、国に強く迫るべきです。そして日の出町のように医療費の無料化を図ることなど、早期に治療を受けることができるようにすることが求められています。
見直しのたびに必要な介護が取り上げられていく介護保険制度により、ますます家族介護は深刻な状況になっています。保険料・利用料の独自軽減の拡充、さらに介護保険で認められていない必要な介護を受けることができるよう、独自の事業展開が求められます。
住宅政策はどうでしょうか。貧困と貧弱な住居は比例しています。突然の失職、収入の激減、不安定な雇用関係は住み続けられる不安をも拡大します。公営住宅の建設こそ住宅政策の基本に据えなければなりません。また家賃助成政策はこれを補完する制度であり、今日の貧困の拡大状況においては、緊急施策として位置づけるべきです。
第2の柱は、その原因についてです。
最大の原因のひとつは国・東京都が進める構造改革から区民を守るべき区が、一緒になって刷新計画の名のもと、区民の負担を広げてきたことです。区民の暮らしを温め、支えてきた金銭給付事業をはじめとする多くの区独自施策を廃止・縮小したことは、暮らしと営業を厳しくしました。
第二の原因は「公共サービスの民間開放」です。民営化、民間委託、指定管理者制度などの手法で、職員の人件費の縮小を行い、これを「効果額」と表現しました。
この結果どういう事態が生じたでしょうか。また生じつつあるでしょうか。まず低賃金と不安定雇用を常態化した公務労働を生み出しました。給食の民間委託では偽装請負の疑いも問われ、専門職としての報酬は値引きされてしまい、公務労働は単なる労働力として扱われました。一方、図書館では会社本部から人件費削減が求められ、区の図書館では残業代がもらえない、いわゆるサービス残業が余儀なくされています。こうして公務労働は企業原理による労務管理の対象となりました。つまり労働が商取引の要素となり、激しいダンピング競争の中にさらされてしまったのです。
こうした労働環境が長く続けばどういうことが起きるでしょうか。働いても生きることで精いっぱいの労賃では、長続きしませんから、熟練は形成されません。また短期の使い捨て労働でしかありませんから、働き手の能力に依存してきた住民サービスは質の低下へなるのではと危惧されました。
その不安は、指定管理者による管理・運営施設においてはっきりとあらわれました。今年5月に行われた社会保険労務士による「モニタリング調査」結果が公表されました。区の体育施設のすべてを一括して受託しているのは、株式会社コナミスポーツですが、その調査結果には、長時間労働の実態すら把握できておらず、残業への未払いが確認できない、有給休暇制度はあってないようなもの、労働者の健康診断は会社の責任であるにもかかわらず、実施もされていない、事故が起きても労災の対象外、時間外・休日労働協定の空洞化など、慎重ですがその問題点がはっきりと書かれていました。これが行政が生み出した公務労働の外部化であり、人権を保障するための公共サービスを、人権を著しく阻害された労働が支えている実態です。保育園では低賃金と経験不足の不安があり、総合評価で70点未満、評価Cでした。人件費を抑えて、保育サービスは良くなるという信じがたい理屈は否定されました。
ふれあい館・特養ホーム・保育園・図書館・福祉園・学童クラブ、障害児放課後対策事業「はすねっこ」、学校用務、学校と保育園の給食。いま、自治体は「官製ワーキングプア」を作り出した責任が問われています。板橋区では指定管理者における人件費の算定を6割としてきました。この制度導入時に区は、このことで働く人の不安がどう広がるか、社会の雇用不安がどうなるかを考えていなかったことを告白しています。安上がりの雇用を支えている労働者の多くが女性です。女性が正規職員で働く道をも閉ざしてきました。男女平等参画社会と言いながら、男女の格差を利用しているとも指摘されるのです。働く人の人権を守ることは区民の人権を守ることに直結です。人権を守り、人権を育む現場に100%責任をもった区の姿勢の大転換が求められます。
区民の負担を増やし、区の単独事業を削れば効果が上がったと評価される計画、職員自ら自分のしてきたことを否定せざるをえない刷新計画が進められる中で、職員が引き起こす事件が次々と発生したことは何を意味するのでしょうか。
前年に発覚し、08年度にその原因を明らかにし対策を立てて進めるとしたのが、元教育委員会庶務課電気職職員による不正事件の解決でした。刑事事件が結審し、現在区としては裁判で取り上げられた事件以外にも架空、水増しの疑いがある工事について、損害額を確定する作業を行っているといいますが、元職員が架空・水増し工事によって得た搾取金で持ち込まれたパソコン類が、教育長室、学校施設係など、区行政の中で深く、広く使用されたことにだれ一人気付かなかったとする説明は信じられるものではありません。備品シールもはっていないものが大量に持ち込まれてなぜ「おかしい」と思わないのでしょうか。元職員は「職場で不足するパソコン等を補うために購入資金とした」と供述していますが、まさに組織ぐるみで裏金づくりが行われていたと疑われます。改めて区の区民に対する誠意、責任が問われています。
|